ある冬の寒い朝のこと。
ワシントンの地下鉄構内で、一人の男がバイオリンを弾き始めた。
ジーンズにシャツに野球帽というラフな格好をした彼はクラシックの名曲を6曲、43分間演奏して去って行った。
ちょうど朝の通勤ラッシュの時間帯であり、彼の前を1000人以上の人が通過したんだ。
けれど、1分以上足を止めて彼の演奏を聞いたのはたったの7人だけだった。
「そんなの普通じゃない?」
まあ、そう思うよね。
ただ、弾いていたのが実は普通の人じゃないんだ。
彼の正体は世界でも指折りのバイオリニスト、ジョシュア・ベル。
コンサートでは100ドル以上するチケットが完売する、
まさに実力も人気も兼ね備えた名バイオリニストだ。
ちなみにバイオリンは3億円をゆうに超える名器、ストラディバリウス。
そんな彼が、どうして駅の構内なんかで演奏したのか。
タネを明かすと、これはアメリカの新聞『ワシントンポスト』紙が次のことを確かめるために行った実験だったんだ。
「ありふれた環境で、都合の悪い時間に、私たちは美を認知するか?
足を止めてそれを観賞するか?予想できない状況でも才能を認知するか?」
結果、ほとんどの人は演奏のすばらしさに気づかなかった。
もちろん素通りした人だって、コンサートホールで彼の演奏を聞いたならまったく違う感想をもつはずだ。
それは 「すばらしい演奏を聞くんだ」 って気持ちになっているから。
見る側、聞く側の気持ち次第でその価値は大きく変わってしまうってことを、この実験は教えてくれる。
で、ここからが本題ね。
「あの先生の授業は聞いても意味ないよ」
「何言っているのかよく分からないし」
ときどき、学校の授業についてこう言っている子がいる。
こんな気持ちで受けている授業は、その子にとって価値が大きく下がっているに違いない。
たしかに、ちょっと分かりにくい授業もあるだろう。
どうしても合わない先生だっているかもしれない。
だからって 「聞いても意味がない」 なんて気持ちで授業を受けていたら、結局は自分にとってマイナスになるだけだよ。
どうせ授業中は授業を聞く以外にできることなんてないんだ。
ザビエルに落書きしたって、ボーっと天井を見たって、何にもならない。
貴重な時間を使っているんだ。 「授業には自分の知らないことがきっとある。できるだけ学んでやろう」 って気持ちでいたほうが授業の価値は上がるし、それが自分のプラスにもなる。
伸びていく子は、学校の授業をしっかり聞いたうえで塾を上手に活用している。
どんな授業でも自分の聞き方次第だ。
同じ先生の授業を受けていても内申1から5までの生徒がいるわけで。
「あれ、この先生の授業ってこんなに分かりやすかったっけ?」
気持ちが変われば価値が変わる。
ひょっとしたら今まで見えていなかった授業の価値に気づくことだってあるかもしれないよ。
内申が取れる生徒と内申が取れない生徒の決定的な違いは
学校の授業中の態度です。
一つでも多くの情報を自分の頭に入れる。
一つでも多くの情報をノートに書きこむ。
こういったことをちゃんとできるかどうか
いつも自分に問いかけてみようね。